2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s396_1
【諸言】本邦における腎移植の長期生着率は向上の一途にあるが、更なる向上のためには長期的な管理が必要となる。今回、当院での腎移植後の透析再導入患者を調査した。【方法】当院で2000年以降に実施したデータ追跡が可能な腎移植患者160例のうち、透析再導入患者19例について検討した。【結果】男性14名、主な原疾患はIgA腎症が6例、糸球体腎炎(IgA腎症以外)5例、糖尿病性腎症が2例であった。生体腎移植18例(ABO適合移植11例)、Preemptive症例は4例であった。移植時の平均年齢は43±14歳、透析再導入時の平均年齢は53±13歳、移植から再導入までの平均期間は8.9±4.1年であった。再導入の原因は慢性拒絶が5例(TCMR3例、ABMR2例)、感染症が4例(肺炎3例、他科術後感染症1例)、原疾患の再発が3例(IgA腎炎1例、糖尿病性腎炎2例)、悪性腫瘍が2例(PTLD)であった。このうち透析再導入までの腎機能増悪因子が単一であった症例は2例のみで、多くは経過中に複数の合併症を生じ腎機能が緩徐に増悪した。導入後の死亡症例は11例で、うち7例が導入後1年以内で、原因は多臓器不全や心血管合併症であった。【結論】当院での透析再導入原因は本邦の集計報告と遜色ないが、実は単一因子での腎機能廃絶となった症例は稀で、多くは感染症や心血管系疾患、悪性腫瘍などの複数の要因が関連していた。これらの適切な管理が、今後の長期移植腎生着率と生存率の向上につながると考える。