移植
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82歳で生体腎移植施行、94歳でDeath with functioning graftとなった超高齢レシピエントの一例
平野 一川添 祥藤崎 秀明岡部 知太藤原 裕也上原 博史能見 勇人小村和 和正稲元輝生 稲元輝生東 治人
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s396_3

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抄録

腎硬化症を原疾患とする末期CKDで74歳時に血液透析導入となった。その後、81歳時に当時56歳の娘がドナー意思表示。レシピエント適応について慎重に検討を行い、82歳時に生体腎移植を施行した。術後1年目の移植腎プロトコール生検で、急性拒絶反応の所見ありステロイドパルス療法施行。その後は、血清Cr値0.6~0.8mg/dlと良好に経過していた。91歳時に、完全房室ブロックでペースメーカー植え込み術施行。この頃よりADL低下、それまでの10年間は自宅より自己通院していたものの、92歳時より施設入所となった。同年に新型コロナウィルス感染症罹患、一時全身状態が悪化したが回復。しかし94歳時、細菌性肺炎罹患を契機に全身状態が悪化、死亡の転機となった。本症例では、82歳という高齢で生体腎移植レシピエントとなり、13年の経過でDeath with functioning graftとなったものの、透析離脱後は同年代の高齢者と同等、あるいはそれ以上のQOLを維持することができた。超高齢社会を迎えた日本では、腎不全患者の高齢化も進み、高齢で腎代替療法導入するケースが増加している。高齢者においても腎移植は生命予後を改善する可能性は高いが、s加齢に伴う合併症も多い。年齢による腎移植の適応はガイドラインでも定められておらず、症例に応じ慎重に考慮し選択すべきである。示唆に富んだ症例であり、文献的考察も含め報告する。

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