抄録
南ベトナムMekong Delta地域の雨季の稲作においては, 地勢によって浮稲, 1回移植稲, 2回移植稲の3ツの異なる栽培型の稲が栽培されている.現在における栽培面積は1回移植稲, 浮稲, 2回移植稲の順であり, 単位面積当りの収量は1回移植稲, 2回移植稲, 浮稲の順である.
著者らは, 栽培型の異なるこれらの稲の生理生態的特徴を明らかにすることを目的として一連の実験を計画し, まず, それぞれの型に属する稲の暗黒下における中茎の伸長性について調査した.なお供試品稲は浮稲8, 1回移植稲33, 2回移植稲18であった.得られた結果の概要はつぎの通りであった.
1) 暗黒下, 30℃における中茎の伸長は, 浮稲では全品種31mm以上, 2回移植稲では全品種11mm以下であったのに対し, 1回移植稲では1~105mmと変異の幅が大きかった.
ところで, イネ科作物においては中茎が良く伸びることは出芽にとって非常に有利なことが知られているが, 一般に直播栽培されている浮稲で全品種の中茎が良く伸びたことは非常に興味深い.
2) 日本で広く栽培されている日本型水稲においては, 暗黒下における中茎の伸長は一般に10mm以下 (普通は1~5mm) であるが, これらの品種でも種子を湿潤・高温処理すると中茎の伸長が著しく促進される (ある品種では102mm) ことが知られている.そこで, 暗黒下において中茎の伸長が4mm以下であった1回移植稲および2回移植稲品種の種子を湿潤・高温処理したところ, これらの品種においては中茎の伸長はほとんど促進されなかった.このことは, 中茎がほとんど伸長しない1回移植稲および2回移植稲では, 中茎の伸長の棧作は日本型水稲とは異なることを示すものと考えられる.
3) 玄米の長/巾比は, ここに試供した浮稲, 1回移植稲および2回移植稲の全品稲において2.1以上であった.なお, 中茎の伸長程度と玄米の長/巾比との間には相関関係は見られなかった.