熱帯農業
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さとうきび育種における選抜方法に関する研究
第5報 モザイク病がさとうきびの諸形質に及ぼす影響
永冨 成紀前田 浩敬
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1976 年 19 巻 2 号 p. 81-91

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抄録

モザイク病がさとうきびの生育・収量および蔗汁質に及ぼす影響を解明する目的で13品種を供試し, モザイク無病および罹病苗を植付け, 春植と株出栽培で検討を加え, 下記の結論を得た.
(1) 発生茎数の推移を見れば, 春植・株出共に傾向は類似し, 発生初期 (6月) には罹病区が少なく, 最大分けつ期 (7月) にはその差が不明瞭となり, 有効茎決定期 (9~10月) には再びその差が顕著になり, 最終的には原料茎数は罹病区が減少する.
(2) 葉身について春植では, 葉身長・1葉面積は罹病区で減少し, 葉幅には差が見られない.
(3) 可製糖量の罹病区の無病区に対する比率は, 春植で87%, 株出で92%で, この減収要因は原料茎重の減収 (春植87%, 株出89%) に由来し, 可製糖率には悪影響はなく, 株出では生育茎数の減少による早熟傾向さえ伺える.
(4) 原料茎重の減収は, 収量構成要素である原料茎数と1茎重共に減少し, 1茎重は原料茎長の短縮に起因し, 茎径には変化がない.原料茎長の短縮は, 有効節数の減少が響き, 節間長も若干短縮する.
(5) 蔗汁質は, ブリックス, 糖度, 純糖率および繊維分共に影響が少なく, 株出では早熟の傾向にありブリックス, 糖度は罹病区で上昇する.本質的には, 蔗汁質には罹病の影響はない.
(6) 罹病による原料茎重の減収度は品種間差異が著るしく, ほとんど減収しない品種から30%程度減収する品種まで, 生理的抵抗性の品種反応は顕著である.
(7) モザイク耐病性育種の推進上の問題点として, 自然感染性の品種間差異を解明すること, 生理的抵抗性品種の育成, モザイク病ウィルス系統の分類・同定と各系統に対する品種間反応を究明すること等が挙げられる.

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