熱帯農業
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キャッサバ塊根の収穫後変質に関する二・三の観察
広瀬 昌平ダーター エンマ S.瓜谷 郁三
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1983 年 27 巻 3 号 p. 149-157

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抄録
キャッサバ貯蔵上の問題である収穫後の変質の発生過程を環境条件との関連で観察し, 以下の結果を得た.
1.収穫後24~48時間以内に塊根に生理的な変質 (vascular streaking: 以下VSと呼ぶ) が認められた.塊根基部から皮層の内側の柔組織に灰褐色のリング状に変色するVSのI型と維管束に沿った青黒色の筋に変色するVSのII型が区別された.
2.塊根に傷害を加えると, VSのI型よりII型が主に発現し, それに伴い塊根の軟腐が発生するのが認められた.
3.VSのII型は塊根軟腐の初期に発現することから生理的変質よりも微生物による変質に関係があるものと推測された.
4.VSのI型の発生に対する塊根成熟程度 (挿苗後5, 6, 7, 8, 9と10ヵ月) の影響は認められなかった.
5.挿苗後8カ月の42品種を供試し, 収穫後3日目にVSのI型に対する感受性を検定したが, 11品種が抵抗性を示し, 他の11品種がスコア4の感受性を示した.VSに対する感受性と収穫時における塊根水分含量との間に負の相関関係 (r=-0.7875**) が認められた.
6.収穫後のキャッサバ塊根の貯蔵法として地下貯蔵の効果を検討したが, 3週間の地下貯蔵では変質はみられなかった.特に, Hawaiian-5種はVSばかりでなく微生物による変質にも抵抗性を示した.地下貯蔵は農家レベルのキャッサバ貯蔵法として十分有効であった.
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© 日本熱帯農業学会
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