抄録
熱帯におけるアブラナ科野菜の春化及び脱春化と温度との関係を明らかにする目的で本研究を行った.供試材料はダイコン (みの早生) とし, 脱春化効果に及ぼす昼夜変温の影響を明らかにするため, 以下の実験を行った.
第1実験では, 脱春化限界昼温を確認するため, 14/5℃, 17/5℃と20/5℃昼夜変温で40日間を処理とした.第2実験では, 脱春化昼温範囲を調査するため, 対照無処理区のほか5/5℃及び15/5℃, 20/5℃, 30/5℃の各昼夜変温の21日間処理区を設けた.第3実験では, 夜温が脱春化効果に及ぼす影響を明らかにするため, 5/5℃及び15/5℃, 15/10℃, 15/15℃の各昼夜変温30日間処理区, ならびに無処理の対照区を設置した.
処理の結果としては, 昼温・夜温とも高いほど抽だい・開花には遅れが見られた.供試したみの早生ダイコンにおける春化有効の限界温度は15℃という比較的高温であることを明らかにした.一方, 脱春化効果の開始温度は17℃であった.また, 30℃の昼温を与えた区では完全な脱春化状態となった.不完全な脱春化状態 (20/5℃昼夜変温) 下では, 処理期間が長くなるにつれて, 夜間の低温により春化効果の積算効果があらわれ, 最終的には, 花芽分化まで至った.このような状態下での開花は低温処理期間が不十分な場合の開花と同様であった.このことは, 昼温と夜温が脱春化過程に同様の効果を与えているものと考えられた.
以上の結果にもとづき, 熱帯高冷地において, 花成誘導によりアブラナ科野菜の採種栽培を確立する方法について考察を加えた.