抄録
温帯の夏季及び熱帯地域のトマト栽培では高夜温に遭遇する機会が多く, そのことが収量, 品質を低下せしめる原因の一部となっていると考えられる.著者らの研究により, 異なる生態型を有する三品種 (大型端光, 日本型; マネー・メーカー, 北欧型; ローマ, 南欧型) のうち, 光合成的にマネー・メーカーは耐暑性が高く, ローマはそれが低いことが知られた.そこで本報においては, 三種類の夜温処理区 (25/15, 25/22.5, 25/30℃) を設け13C-トレーサー法によって光合成産物の転流・蓄積に及ぼす夜温の影響を検討した.
13CO2を明期に1時間取り込ませ, その直後 (0h) , 6時間後 (明期の終り, 6h) 及び18時間後 (暗期の終り, 18h) にサンプリングを行い, 植物体を9~12部位に分割して13Cの動態を調べた.結果の概略は以下の通りである:
1.同化開始1時間後, 13C濃度は葉, 特に上位葉で最も高かった.13C同化産物は速やかに転流し, 果実でも濃度上昇が見られた.また, 根でも僅かに検出される場合があった.大型瑞光は25/22.5℃区, ローマは25/15℃区で葉の13C濃度が最も高く, マネー・メーカーはいずれの区でも安定して高い値を示した.
2.6時間後, 葉の13C濃度は著しく低下し根で僅かな, そして果実で顕著な増加が見られた.大型瑞光は25/22.5, 25/30℃区, ローマは25/15℃区で果実への転流が多かったが, マネー・メーカーは全区で他品種を上廻った.
3.18時間後, 葉・茎の13C濃度はさらに低下したが, 根では若千上昇した.果実は25/22.5℃区では継続的に上昇したが, 他の区では大型瑞光の25/15℃区を除き, 濃度上昇はなかった.
以上, トマト品種における光合成産物の生成・転流・蓄積は夜温の影響を受けることが知られたが, 果実への転流は22.5℃という, やや高いと考えられる温度下で最大であった.また, 品種間には明瞭な温度反応の差がありマネー・メーカーは温度環境の変化に鈍感, ローマは高夜温下で劣性であることが分かった.