熱帯農業
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白菜の縁腐れ発生に及ぼすN肥料の形態, 濃度と施肥時期の影響
今井 秀夫馬 清華呉 登琳
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1988 年 32 巻 2 号 p. 85-94

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抄録
熱帯地域の夏期白菜栽培における最も重要かつ克服困難な問題は縁腐れ, 並びに芯腐れである.アジア野菜研究センター (AVRDC) 土壌研究室は1983年より, この問題に取り組み, 縁腐れ発生の要因及びメカニズムの解明, さらに有効な防止技術の開発に成功した.
本報では主として縁腐れ発生要因について砂耕栽培法を用いて検討し, 結果を以下に要約した.
1本実験環境下で引き起こされた縁腐れの発生原因は従来から考えられているようなカルシウム欠乏ではなく, アンモニア毒性による根系障害が直接的原因であり, その結果引き起こされる水分ストレスにより, 二次的にカルシウム欠乏が生じる.よって, 熱帯における夏期白菜栽培の際に, しばしば遭遇する以下のような条件では縁腐れ, 芯腐れ共に深刻な問題になってくる.
(1) 排水不良土壌地帯
(2) 地下水位の高い土壌地帯
(3) 大雨の後, 特に結球初期に大雨が降った場合
2縁腐れの発生は単にNH4-Nの濃度を下げるだけ
では回復せず, 極めて低濃度でも発生するが, N源をNO3に変えると急速に回復する.逆に, NO3からNH4にN源を変えた場合は, 4~5日後に根傷みによる水分ストレスが発生する.
3縁腐れの発生は結球期が最も顕著である.よって, 結球期のNH4-Nによる追肥は避けるべきである.
4夏期白菜の多収穫には適切なNH4/NO3比率を考慮する必要がある.NH4-Nは初期生育を促進し, 多収をもたらすが, 結球初期以降は縁腐れ防止のため, NO3-Nによる追肥が望ましい.
5以上の結果により, 熱帯圏に広く分布する土壌の特性, 降雨パターン, 土壌利用形態等に起因する作付時の過剰土壌水分の迅速除去による硝化作用の促進や, Nの供給速度を調節するための分施等は, 白菜の縁腐れ並びに芯腐れを防ぐのに極めて有効な対策である.
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© 日本熱帯農業学会
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