熱帯農業
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異なる水深下における浮稲茎切片の節間伸長と節間空隙内エチレン濃度
東 哲司三原 富美子内田 直次安田 武司山口 禎
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キーワード: エチレン, 浮稲, 節間伸長, 深水
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1990 年 34 巻 4 号 p. 265-270

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抄録

深水下における浮稲の節間伸長と内生エチレンとの関係について調べるために, バングラデシュの浮稲品種Habiganj Aman IIの茎切片を用いて, 深水処理の水位と節間空隙内のエチレン量及び節間・葉の成長との関係について調べた.
まず水圧と節間伸長との関係を明らかにするために, 茎切片を横方向に固定し, 水位を100cmまで段階的に変えて深水処理を行った.深水処理により節間は伸長したが, 水深の程度に応じては伸長は促進されず, 節間伸長の促進の差は水中か気中にあるかによる違いだけであった.
茎切片を縦方向に固定し, 水位を段階的に変える処理を3日間行った.節間の伸長は, 処理開始時に茎切片が水面下にある区で著しい促進が認められた.節間空隙内のエチレン濃度は, 処理終了時に茎切片が水面下にある区で高くなった.
次に, 茎切片に5日間深水処理を行い, 節間と葉の伸長量および節間空隙内のエチレン濃度を経時的に調査した.深水処理により節間内のエチレン濃度は増加したが, 茎切片の一部が水面上に出ることによりエチレン濃度は減少した.一方節間の伸長は, 深水処理により促進されたが, 茎切片の一部が水面上に出て節間内のエチレン濃度が減少したにも関わらず節間の伸長促進は変化しなかった.
以上により, 深水下での浮稲の節間伸長の促進は, 水圧の影響は受けず, 水中でのガス拡散の低下による組織内でのエチレン濃度の増加が要因の一つと考えられる.また, 急激な節間伸長にとってエチレンは引金的役割をしているのかもしれない.

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