熱帯農業
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ササゲの耐乾性
第1報ササゲ (Vigna unguiculata (L.) WALP var. unguiculata) の吸水能力に関する研究
伊谷 樹一宇都宮 直樹重永 昌二
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1992 年 36 巻 1 号 p. 37-44

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抄録
ササゲ (V.unguiculata, ケニヤ在来品種) の吸水特性を調べるため, 浸透吸水力, 根量, 深層根の機能について, ササゲ (V.sinensis, 日本在来品種) , ダイズ (Glycine max) , インゲン (Phaseolus vulgaris) , リョクトウ (Vigna radiata) との比較実験をおこなった.浸透吸水力の指標となる根の呼吸速度は, 供試作物間に差は認められなかった.また, 受動吸水力に強く影響すると考えられる単位葉面積当たりの根量では, ササゲ (ケニヤ在来品種) が他の供試作物に比べて低い値を示した.つぎに葉の気孔開度に強く影響する根域を調べるため, 無底のポットで砂耕栽培した植物体の根を, 開花期にポット底部 (土壌表面から80cm) より上方に10cmごとに切断して, 各切断後の葉の拡散抵抗値を測定した.ササゲ (ケニヤ在来品種) は, 他の供試品種より深い位置での根の切断が拡散抵抗値に影響し, より深い土壌に吸水域を求めていることが示された.また同品種は, 土壌乾燥処理によって吸水域が土壌深層に移行した.
以上の結果より, ササゲ (ケニヤ在来品種) の根は, 機能的, 量的のいずれにおいても, 他の作物よりも吸水力に優れているとは考えられなかった.土壌乾燥下での吸水を可能にしているのは発達した深層根の働きによるもので, この根系がササゲの最も重要な吸水特性であると結論した.
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© 日本熱帯農業学会
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