熱帯農業
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イネ雄性不稔細胞質および稔性回復遺伝子の分類・同定
第1報 野生稲由来のRT61系統の雄性不稔細胞質および稔性回復遺伝子の同定
本村 恵二東恩納 智石嶺 行男村山 盛一
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1992 年 36 巻 3 号 p. 221-226

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抄録

野生稲由来のRT61系統 (総称) および栽培稲由来のBT系統 (総称) はいずれも台中65号の同質遺伝子系統であり, ともに雄性不稔細胞質 (cms) と一対の稔性回復遺伝子 (Rf-rf) との相互作用によって雄性不稔性またはその稔性回復性を示し, 花粉稔性は配偶体支配である.両系統の細胞質および稔性回復遺伝子の異同を調べるためにそれぞれの細胞質雄性不稔系統 (RT61AおよびBTA, 遺伝子型 (cms) rfrf) および稔性回復系統 (RT61CおよびBTC, 遺伝子型 (cms) RfRf) と台中65号 (n) rfrfを用いて交雑実験を行った.
RT61A/BTCおよびBTA/RT61CのF1はいずれも全個体が花粉半稔・種子正常稔となり, 両系統に細胞質差はみられなかった.RT61C/BTCおよびBTC/RT61CのF1稔性はともに全個体が花粉完稔・種子高稔となった.したがって, ここでも細胞質差は見られず, また不稔花粉が生じてないことから, 両系統のもつ稔性回復遺伝子は同座かもしくは強い連鎖であると考えられた.RT61A/BTCおよびBTA/RT61Cの両F1に台中65号を花粉親として交雑すると, 母本となったF1の交雑方向に関係なく花粉半稔・種子高稔個体と花粉完全不稔・種子完全不稔個体が1: 1に分離した.このことは, それぞれの稔性回復遺伝子が相手細胞質のもとで正常に働いて胚のうを通して正しく伝達されていることを示している.RT61C/BTCおよびBTC/RT61CのF1に台中65号を花粉親として交雑した三系交雑F1はいずれの場合も, 全個体が花粉半稔・種子高稔個体となり, 不稔個体を生じなかった.これは両系統の稔性回復遺伝子が同座である場合の分離に適合していた.
以上の結果から, 両系統の細胞質は同一タイプであり, また稔性回復遺伝子は同一作用を示す同座の遺伝子であると結論づけられた.

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