熱帯農業
Online ISSN : 2185-0259
Print ISSN : 0021-5260
ISSN-L : 0021-5260
マレイシアMuda灌漑地域の水稲直播栽培法の確立に関する研究
第2報 Muda地域の水稲潤土直播栽培における農作業および苗立ちの実態
平岡 博幸Nai Kin Ho和田 源七
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 36 巻 3 号 p. 211-220

詳細
抄録

マレイシアMuda地域で水稲潤土直播栽培の苗立ち実態を明らかにするため, 用排水路密度の異なる2地区 (A, B) を選定し, 1988年第2作に苗立ちの実態調査を行った.A, B両地区ともに収穫および耕耘作業は機械化されており, 播種時の整地状態はほとんどの水田で良好であったが, ごく一部の耕耘2回のみの水田では不良であった.播播量はA地区の平均で約65kg/haであり, 最小37kg/haより最大100kg/haの幅があった.
当地域は田越し灌漑であり, 同一水田内での地面の高低差および隣接水田間の高低差が播種時より苗立ち期間の田面水の排水に著しく影響を及ぼす.さらに当地域の農家は, 水田内の排水の悪い箇所に土を詰めた麻袋を引いて溝を作り, 田面水の排水に努めている.田面水の排水の良否が苗立ちに影響を及ぼす.苗立ちの悪い欠苗箇所の多い水田は, 1) 1筆面積の小さな, 2) 水田内の地面の高低の多い, 3) 比較的低地にある, 4) 用水路に近接したおよび5) 耕耘回数の少ない水田である.
苗立不良とみられる欠苗か所6%以上を含んだ水田はA地区では約20%, B地区では約35%に達した.これらの値は両地区ともに, 灌排水施設の比較的整備されたB地区においても, 播種時における田面水の排水が不充分であることを示している.A地区の平均苗立数は約160本/m2, 平均変動率は約50%であり, 同一水田内の苗立ち数の変動係数は平均苗立ち数の多いほど低い傾向がみられた.当地区の平均苗立ち数はほぼ満足すべき値であったが, 約20%の水田では平均苗立ち数が100本/m2以下であり, そこでは苗立ち不足による減収が予測される.
今後潤土直播栽培における苗立ちの向上をはかるためには, 田面水を迅速に排水することが必要である.そのためには, 田面の均平化, 水田内および水田間における排水技術の開発が重要である.

著者関連情報
© 日本熱帯農業学会
前の記事 次の記事
feedback
Top