熱帯農業
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コチョウランの花粉塊貯蔵と種子形成ならびに発芽におよぼす有機溶媒の影響
米田 和夫百瀬 博文窪田 聡
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1993 年 37 巻 4 号 p. 259-263

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抄録

コチョウランの花粉塊をシリカゲルとともに密閉し, あるいはアセトン, ニトロメタン, tert-酢酸ブチル, エチルエーテル, キシレン, トルエン, ニトロエタン, ベンゼン, n-ペンタンのいずれかの9種類の有機溶媒中に浸漬貯蔵し, その生存と表面構造および貯蔵花粉塊を用いた交配による種子形成ならびにプロトコーム形成に対する影響について検討した.
1. ニトロエタン, アセトンに8カ月間以上貯蔵した花粉塊の生存は約40%を維持していた.
2. シリカゲルに貯蔵した花粉塊は2カ月後から急激に生存率が低下し, 6カ月後には完全に枯死した.
3. 貯蔵期間が長く, 生存率の低下した花粉塊の表面構造は新鮮花粉塊に比べて平坦状となった.
4. 1年間以上, tert-酢酸ブチルやベンゼンに貯蔵した花粉塊を用いた交配により, 結実が認められた.これらの莢の肥大は新鮮花粉塊のものに比べて若干劣っていた.
5. エチルエーテル, アセトン, tert-酢酸ブチルで16カ月間貯蔵した花粉塊による交配から得られた種子はプロトコームを形成した.
6. 以上により, コチョウランの花粉塊保存については, 従来のシリカゲル・低温貯蔵よりも有機溶媒貯蔵の方が生存, 結実, 種子発芽からみて, tert-酢酸ブチル, ベンゼン, エチルエーテルなどで1年間以上であり, 優れていることが明らかになった.

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