抄録
透水性の高いサンゴ石灰岩に被われた典型的な亜熱帯域島嶼の一つである奄美群島沖永良部島では, 近年集約的な花き栽培が急増している.同島のとくに耕地率の高い地区内において地下水の硝酸態窒素濃度等を測定し, その分布と地形及び土地利用との関連について考察した.さらに, 同島内の水道水源井戸に見られた硝酸態窒素濃度の長期的な変遷と周辺の土地利用との関連についても考察した.
1.調査地区内の地下水中の硝酸態窒素濃度の分布は地表面の地形とは相関がなく, 集落の中心地点から周辺の畑作地に向かうほど高濃度となる明瞭な分布を示した.
2.調査地区は全体に耕地率が極めて高く, 集約的な花き栽培の割合も比較的高い.地下水硝酸態窒素濃度は全体に高く, 17サンプル中7サンプルは10ppmを超えた.
3.同島内和泊町の水道水源井戸のうち周辺を耕地に囲まれているものには硝酸態窒素濃度が長期にわたり漸増を続けているものがあったのに対し, 林地が保全されているものではそのような傾向が見られなかった.
4.以上により, サンゴ石灰岩に被われた沖永良部島においては地上の農業生産活動が地下水環境に大きく影響を与えると考えられ, 住民の生活に必要不可欠な飲用地下水の水質保全を考慮にいれた土地利用・農業施策が必要であろう.