スリランカの稲作における農家の技術選択を規定する要因を, 県別データを利用し, 耕耘・稲仕立・除草の各作業についてそれぞれ技術採用関数を計測することにより検討した。主要な説明要因として, 稲作賃金率・作付規模・灌漑比率・植民農民による技術移転・近代品種作付率・稲仕立法・気温を選択し, さらに地域・作季・年次についてのダミー変数が用いられた。計測結果は, 賃金率ないし作付規模が採用技術の地域差を規定する有意な要因であることを確証するものであり, 農家の技術選択が, その表面上の多様性にもかかわらず, 誘発的技術変化の理論が予想する「適正技術」と整合的であることが明らかにされた。灌漑・技術移転・近代品種・稲仕立法は特定の作業についての技術採用関数で有意な規定要因であることが見出された。しかし, これらの要因以外に, 幾つかの地域についてのダミー変数が有意な係数を示し, 重要な地域的要因が特定されずに残されていることが示唆された。