抄録
乾燥や高温による苗の活着率の低下や乾季における幼木の生育不良などの改善は, 乾燥地のみならず熱帯雨林の造林においても必要である。そこで土壌の保水力を向上させる高吸水性樹脂と生長の抑制のみらなず水ストレスの軽減効果が報告されている生長抑制剤を用いて, 熱帯の造林用樹木苗3種類の水利用効率の向上について検討した。いずれの樹種でも高吸水性樹脂または生長抑制剤によって生存日数は明らかに延長され, 両者の組み合わせでさらに伸びた。高吸水性樹脂による生存日数の延長は, 土壌の容水量の増大に基づき, 生長抑制剤においては, 葉面積の縮小による蒸散量の減少に起因するのではないかと考えられる。アカシアマンギウムでは, 高吸水性樹脂および生長抑制剤処理によって1日当たりの平均水消費量は減少して水利用効率は向上し, 両者の組み合わせでその効率はさらに向上した。このように高吸水性樹脂と生長抑制剤を用いることで, 熱帯の造林用樹木苗の水利用効率の向上が図られる可能性が示唆された。しかし, 樹種によっては, 高吸水性樹脂で容水量が増加してもその分を浪費しやすく, 水利用効率が低下する場合があった。蒸散量の多い樹種では生長抑制剤による葉面積の減少作用が水の利用効率を向上させるのに有効であるが, 容水量の増大はその向上にあまり寄与しないと推察できる。生長抑制剤は苗の徒長抑制にも利用できるが, それを処理した苗の生長の回復を確認するとともに, 生長抑制剤の最適処理量を今後検討する必要がある。