熱帯農業
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中国雲南省イネ遺伝資源における種子リポキシゲナーゼ―3欠失変異
伊勢 一男鈴木 保宏熊 建華戴 陸園葉 昌榮工藤 悟前川 雅彦
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2002 年 46 巻 1 号 p. 33-38

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抄録

中国雲南省周辺は, アジア栽培イネの遺伝変異中心の一つとされてきた.中国雲南省農業科学院との共同研究によって, この豊富な変異を持つ雲南省イネ遺伝資源108品種の中から, 22のリポキシゲナーゼー3 (LOX-3) 欠失品種を見いだした.LOX-3はリポキシゲナーゼの主要なアイソザイムとされており, 米の胚芽のLOX-3欠失変異は, 貯蔵中の酸化による古米臭を軽減する効果が期待されている.葉のエステラーゼ・アイソザイム遺伝子型による品種の分類では, 4型と6型にLOX-3欠失品種が多かった.今回見いだしたLOX-3欠失品種は, 早生, 短粒, 無毛, 無芒の特徴を持つ陸稲品種に多かった.これらの品種特性は, 中国雲南省山岳地帯周辺に分布する特徴的な品種群の「光殻稲」に類似していた.栽培イネの起源や進化に関する研究によって, 「光殻稲」はジャポニカ品種群の原始的なタイプであるとされている.雲南省イネ遺伝資源における高頻度のLOX-3欠失品種の分布は, イネ品種の分化を考える上で興味深い事実である.正常型の日本水稲品種「農林20号」とLOX-3欠失の雲南省産陸稲品種「CI-115」 (「冲腿」) との交雑による遺伝分析をおこなった.その結果, LOX-3欠失性は, 劣性の1遺伝子によって支配されており, 「CI-115」の持つ赤米の遺伝子座とは強い連鎖がないことを明らかにした.

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