2002 年 46 巻 1 号 p. 39-46
ダイジョ塊茎の緩慢な肥大生長から旺盛な生長への転換は, 短日によって誘起されるが, この生長現象にジャスモン酸 (JA) , ジベレリン (GAs) およびアブシジン酸 (ABA) 等の植物ホルモンが関与している可能性が示唆されている.
早生系統の「あらた」と晩生系統の「ソロヤム」を供試し, 生育中期の株に短日処理を施して, 塊茎の肥大生長の転換を誘起し, この肥大生長の転換と葉に内生するJA, GA様物質およびABAの量的変化との関係について検討した.
葉に内生するGA様物質についてはイネ検定法によって検出し, その活性の程度を比較した.また, JAとABAについてはガスクロマトグラフィーを用いて定量を行った.
いずれの系統においても, 葉にJA, ABAおよび複数のGA様物質が内生していた.短日処理によって葉に内生するJAおよびGA様物質量は増加し, 同時に塊茎の肥大生長は転換され, 塊茎生重が著しく増加した.JAおよびGA様物質量の増加と塊茎の肥大生長の転換が一致したことから, 内生JAおよびGA様物質は肥大生長の転換に関与する要因物質の一つである可能性が示唆された.一方, ABA含量は短日処理区と対照区との間に明確な差は認められなかった.さらに, 自然条件下において, ABA含量は生育の進行に関係なくほぼ一定であったことから, ABAは塊茎の肥大生長の転換における間接的な要因物質ではないかと推察された.