熱帯農業
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Oryza rufipogon 由来のイネ系統RT102における細胞質雄性不稔および稔性回復の遺伝
本村 恵二諸見里 善一安谷屋 信一
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2003 年 47 巻 2 号 p. 70-76

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抄録

Oryza rufipogonのK102系統を1回親母本にし, 栽培イネ品種台中65号を反復親父本に用いて8回の連続戻交雑を行い, 花粉および種子稔性の異なる2種の台中65号型核置換系統を得た.一方は正常な花粉および種子稔性を持つ稔性回復系統 (RT102C) であり, 他方は花粉および種子稔性が不稔となる雄性不稔系統 (RT102A) であった.稔性に関する遺伝を明らかにするために, 両系統と台中65号との間で交雑実験を行い, 次の結果を得た.
稔性は細胞質と核内の稔性回復遺伝子との相互作用により支配されていた.すなわち, 正常細胞質 (mfc) のもとでは稔性回復遺伝子 (Rf―rf) の優劣に関係なく, 花粉が正常に発育し, 受精が行われるため種子稔性も正常であった.雄性不稔細胞質 (msc) のもとでは, Rf遺伝子を持つ花粉は正常であるが, rf遺伝子をもつ花粉は途中で発育を停止し不稔となった.そのため雄性不稔細胞質のもとでは遺伝子型により花粉および種子稔性が異なった. (msc) RfRfでは花粉は球形で濃染し正常であり, 種子稔性も正常であった. (msc) RfrfではRf花粉は正常であるがrf花粉は不稔であった.ただし, rf花粉も見かけ上は正常であった.種子稔性はばらつきが人きく, (msc) RfRfより低かった. (msc) rfrfの花粉には変形・不染花粉と球形・染色花粉があったがいずれも不稔であった.両タイプの花粉の比率は葯によって異なっていた.種子稔性も完全不稔であった. (msc) Rfrf個体の自殖後代では, 不稔個体が生ぜず, 配偶体支配型の花粉不稔を示すことがわかった.
本報のRT102系統の細胞質および稔性回復遺伝子は, これまで報告されているものと作用が異なっており, 次のように命名した.ただし, RT61およびRT98の細胞質および稔性回復遺伝子もまだ命名されておらず, 併せて命名した.RT61に関してはmsc1, Rf11 , RT98ではmsc2, Rf12, RT102ではmsc3, Rf13とした.

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