熱帯農業
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マングローブ植物類 (Sonneratia caseolarisAegiceras corniculatum) の組織培養条件下における養分吸収特性
大西 卓宏福井 博一小見 山章
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2003 年 47 巻 2 号 p. 90-97

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抄録

マングローブ植物は, そのほとんどの種類で培養技術が確立されていない.マングローブ植物の養分吸収特性について詳しく調べた研究がなく, マングローブ植物の培地組成を検討するための情報が不足している.本研究では, マングローブ植物の一種であるS.caseolarisA.corniculatumを培養し, これらの養分吸収特性について調べた.S.caseolarisを5週間培養すると, 培地のpHが3.0にまで低下し, 根が褐変枯死した.培養期間における培地成分の吸収量をみると, 窒素とカリウムが全体の半分以上と多く, 窒素についてはNH4+の選択的な吸収がみられ, NO3-の吸収量はNH4+の半分であった.この窒素吸収の不均衡とカリウムの吸収が培地のpHを著しく低下させた原因と推定された.A.corniculatumは, NH4+とNO3-を同量ずつ吸収し, NH4+の選択的な吸収はみられず, pHの急激な低下は認められなかった.S.caseolayisA.corniculatumを硝酸態窒素しか含まない培地で培養すると, 両種共に葉で窒素欠乏とみられるクロローシスが観察され, 両種の硝酸態窒素の利用能力が低いことが示唆された.
多くの植物はアンモニア態窒素よりも硝酸態窒素を好むことが知られているが, マングローブ植物の生息土壌は還元的で, アンモニア含量が高いことから, マングローブ植物はアンモニア態窒素を利用し易い特性を持つと推定される.したがって, マングローブ植物の培養を成功させるためには, アンモニア態窒素比の高い培地を用いる必要があると推測される.

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