熱帯農業
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ファレノプシス (Phalaenopsis Hybrid) 栽培における数種培地資材の理化学的特性と生育に及ぼす影響
小原 廣幸中川 忠治山崎 旬
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2004 年 48 巻 1 号 p. 40-48

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抄録

ファレノプシス (Phalaenopsis Hybrid) の栽培は, 近年, 気候が温暖で人件費が安い東南アジア, 特にマレーシアや中国南部で盛んになってきている.その培地にはミズゴケが多く利用されているが, 高価な点や資源枯渇などの点から新しい培地資材の検討が必要とされている.そこで本研究ではロックウール, スギガワ, ヤシガラおよびピートモスを供試し, それらの保水・硝酸態窒素保持能力を調査した後, ファレノプシスを栽培して, ミズゴケに代わる新しい培地の可能性について検討した.
保水能力は培地により大きく異なっており, ピートモスで高く, スギガワで低くなった.pFと鉢内水分量の関係から, 鉢内水分量が40%以下になった時点を灌水適期と判断した.一方, いずれの培地も1鉢あたり200ml, 1~2回の灌水により, 施用量のほとんどが流出し, 硝酸態窒素保持能力は低かった.また, 鉢底から流出する硝酸態窒素量とECには高い正の相関関係 (r=0.99) が認められ, ECを測定することにより, 施肥時期を決定できると考えられた.
以上の実験から得られたデータを基に, 培地ごとに適した灌水および施肥回数によりファレノプシスを栽培した結果, ピートモスでの生育は劣っていたが, 他の培地ではミズゴケの生育とほとんど違いが認められなかった.熱帯地域におけるランニングコストや培地入手の難易などを考慮した場合, ヤシガラが培地として十分に利用できると思われた.

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