熱帯農業
Online ISSN : 2185-0259
Print ISSN : 0021-5260
ISSN-L : 0021-5260
生長・乾物生産からみた野生稲Oryza latifolia Desv.の耐塩性
仲村 一郎東江 栄村山 盛一飛田 哲柳原 誠司川満 芳信本村 恵二
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 49 巻 1 号 p. 70-76

詳細
抄録

野生稲Oryza latifolia Desv.の耐塩性を調べるために, 本種と塩感受性野生稲O.rufipogon Griff., 栽培稲O.sativa L.の耐塩性品種SR26B, 及び感受性品種IR28をNaClを含む水耕液で30日間水耕栽培し, NaCl処理後の生長・乾物生産, 及び光合成速度の変化を測定した.その結果, NaCl存在下の生存率, 及び全乾物重はいずれもO.latifoliaで高く, 本種のNaCl耐性が著しく高いことが明らかとなった.NaCl処理前後の植物体各器官の乾物重の比較から, NaClによる生長阻害は, O.latifoliaでは根に, 他のイネでは葉身に大きいことがわかった.葉身水分含量はO.latifoliaで最も高く, 本種はNaCl存在下における水分保持能力が高いことが示唆された.生長・乾物生産における品種問差の要因として処理後14日目の最上位展開葉の光合成速度を測定したところ, O.latifoliaではNaCl存在下でも光合成を維持できることがわかった.葉身に含まれるNa含量はO.latifolia及びO.rufipogonで高かったことから, 野生稲は根における塩の排除能が低いこと, またO.latifoliaは塩を吸収・蓄積しても光合成能力を低下させない機構を有していることが示唆された.

著者関連情報
© 日本熱帯農業学会
前の記事 次の記事
feedback
Top