熱帯農業
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塩ストレス下における個葉の光合成特性からみた野生稲O. latifoliaDesv.の耐塩性
仲村 一郎東江 栄村山 盛一飛田 哲柳原 誠司川満 芳信本村 恵二
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2005 年 49 巻 1 号 p. 77-83

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抄録

イネの野生種O. latifoliaの乾物生産がNaCl存在下でも高く維持された要因を明らかにするため, NaCl処理した個葉の光合成速度, 拡散伝導度, 葉内CO2濃度 (Ci) , 及びCO2固定効率を測定し, 野生稲と栽培種で比較した.その結果, NaCl処理で光合成速度が低下したのは, 栽培種では気孔閉鎖による葉内へのCO2供給速度の減少とRubisco活性の低下が, また野生種では, 気孔の閉鎖が主要因であることが示唆された.液相型酸素電極を用いて気孔開閉の影響を除いた光合成速度を測定したところ, O.latifoliaでは塩ストレス下においても光合成速度が維持されること, またこの効果は下位葉で顕著であることが明らかとなった.また同様にストレスのない条件で栽培した葉身の液相中での光合成速度を, 液相中の反応液のNaCl濃度を種々かえて測定し, 光合成能力に及ぼす塩の影響を調べた.その結果, O.latifoliaでは, 高NaCl反応液中でも光合成速度が維持されることが明らかとなった.以上の結果から, O.latifoliaは葉身の光合成関連酵素あるいは, チラコイド膜のNaCl耐性が高いと考えられた.

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