2005 年 49 巻 4 号 p. 264-269
泥炭土壌で栽培されているサゴヤシの施肥試験では, これまで生育に対する顕著な改善がみられなかった.本試験では, インドネシア, リアウ州の泥炭土壌で栽培されているサゴヤシに対し慣行の約7倍量の養分 (N, P, K, Ca, Mg, Cu, Zn, Fe, B) を施肥し, 施肥16ヶ月後 (乾季1回, 雨季2回) にサゴヤシの地上部および地下部生育量について評価した.多量施肥のサゴヤシ根の乾物重は試験開始時よりも低下したのに対し, 無施肥のサゴヤシ根の乾物重は試験開始時とほぼ同じであった.一方, 地上部乾物重の肥料反応性は各器官により異なった.小葉, 葉軸および樹幹の乾物重は施肥および無施肥のサゴヤシ間に有意差はみられなかったのに対し, 葉柄および吸枝の乾物重は施肥したサゴヤシで有意に増加した.地上部全乾物重に占める母本の乾物重 (全乾物重―吸枝の乾物重) の割合は, 吸枝の乾物重の増加に伴い直線的に減少し, 施肥したサゴヤシでは74%から57%, 無施肥のサゴヤシでは85%から79%に減少した.この結果より, サゴヤシに対する施肥は母本よりも吸枝への乾物重の蓄積を促進することが明らかとなった.