熱帯農業
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タンザニア高原地帯における季節湿地の農業利用
―ムボジ高原の事例―
山本 佳奈樋口 浩和
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2007 年 51 巻 3 号 p. 129-137

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抄録

熱帯アフリカの高原地帯には雨季に湛水する季節湿地が各地で見られる.その大部分はこれまで未利用のまま放置されるか放牧地として利用される程度であり, 農耕への利用は一部に限られてきた.タンザニアのムボジ高原の季節湿地ではその一部を利用した在来農業がおこなわれてきた.イホンベは草地焼畑によるシコクビエ畑であり, 湿害を避けるために季節湿地の周縁部で拓かれる.ビリンビカはトウモロコシや蔬菜の乾季作をおこなう菜園であり, 湧水が届く範囲のゆるやかな斜面に拓かれる.しかし近年, 二つの新しい湿地農業が始められた.ひとつは雨季のトウモロコシ栽培で, ビリンビカの造成によって培われた明渠掘削の在来技術によって排水を強化し, 従来作付けが困難であった湿地環境を克服して近年耕作を可能にした例であり, もうひとつは湛水条件を利用した水稲作で, 他の作物の耕作が不可能となる雨季の季節湿地の深い湛水部分で, その湛水条件を逆に利用して近年始められたばかりの例である.どちらの耕作も季節湿地の広い範囲で適用可能な技術であり, これらの土地利用は季節湿地の中で今まで耕地として未利用であったところに急速に耕地が広がるひとつの契機となるかもしれない.

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