熱帯農業
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パラグァイにおける油桐の播種適期について
寺田 慎一
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1965 年 8 巻 3 号 p. 151-154

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抄録

1962年アルトパラナ指導農場において同年4月採集した油桐の種子を7月下旬から約20日間置きに11月下旬まで6回にわたつて, また覆土は深浅によつて3段階とし1株3粒ずつ播種し, その発芽, 苗立および生育の状況から判断して播種の適期を見出そうとした.半旬別平均最高気温をみると7月下旬から9月上旬頃までは25℃以下であつたが, 次第に気温は昇つて10月上旬は26~27℃, 11月以降は30℃を越えている.土壌水分は7月下旬から11月中旬頃までは豊富のようにそれ以降はやや乏しく12月に入つて甚だしく乾燥した.1月下旬以降は比較的降雨に恵まれている.試験の結果は次のようである.
1.7月下旬から播種を始めたが播種から所定期間における発芽率は播種期の早い程低く, また所定の発芽率に達するまでの期間は播種期の早いほど長い.これは播種期の早いほど地温が低いからであろう.
2.覆土1cmの場合は覆土5~10cmの場合に比較して発芽当初の発芽率は高い傾向にあるが, 長期にわたると格段に低下する.これは地温は高くなるが土壌水分は不均一でまれに水分に恵まれたものが発芽し, その他は概して水分が少なく不発芽に終るためと思われる.
3.圃場において9月5日の播種で最高気温の平均が25~26以上で土壌水分はそれほど不足しない条件下では播種から約20日で発芽する.
4.苗立率 (播種総粒数に対する苗立個体数の割合) は大体発芽率と相並行している.また苗立株率 (総株数に対する苗立株数の割合) は各覆土とも播種期のおくれるにつれて減少している.しかし覆土5~10cmの場合は1cmの場合に比較して各播種期とも苗立株率が高く, また7月25日から9月5日までの播種では播種期のおくれからくる低減の程度は少なく, 95~100%の数値を示し欠株甚だ少ない.
5.苗の生育すなわち樹高, 樹の太さ, 節数等は覆土の深浅にかかわらずほとんど相等しく播種期のおくれにつれて劣つてくる.しかし7月下旬から9月初旬までの播種期ではその生育の逓減度は少なく, 9月下旬以降の播種から急に低下する.樹の生育が劣り充実を欠くと寒害にかかりやすい.
6.苗立株率が高く欠株が少ないことと, 生育が良好であることから7月下旬から9月初旬までの播種を適期と判定した.覆土1cmでは欠株が多くなるので覆土は5~10cmとすべきであり1株3粒播きが安全である.

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