抄録
長い年月をかけて進化した生物の体には、生息環境に適応した優れた機能が備わっている。その優れた機能を活用することで、さまざまな工業製品が開発されるようになった。こうした手法は、バイオミメティクス(生物模倣技術)と呼ばれ、近年、スポーツ用品や建材、医療などの幅広い産業に利用され始めている。バイオミメティクス研究は、電子顕微鏡技術とともに幕を開けた。その電子顕微鏡の限界を乗り越える技術「ナノスーツ」の登場によって、「生きたままの観察」が可能になり、第2の幕が上がろうとしている。さらに生物の画像とその生態や機能を集積・共有し、研究を促進する動きもある。生物が何億年の歴史の中で獲得してきた独特の機能を学び、応用することで、省エネや安全、環境適合の持続可能な人類文明の創造に、弾みをつけようとしている。