自衛隊員のストレス予防方策を検討するため,米軍などの兵士および自衛隊員が経験するストレスと予防方策について,日米の文献を中心にレビューをした.その結果,特に米軍では膨大な実証研究が蓄積されており,戦争関連PTSDに関しては,高強度な戦闘ストレスよりも,派遣から退役後に至るまでの日常ストレスの累積が大きく影響することが明らかにされていた.一方,対策は高強度ストレスを想定したトラウマ焦点化治療を中心に実施されていたが,結果はPTSD診断基準を下回るまでには至らず,トラウマ非焦点化治療や心理社会的アプローチとの併用の必要性が指摘されていた.自衛隊では,「低強度ストレスの累積」への予防方策に加えて,最近は高強度のストレスを考慮する必要も強調されてきた.そのためには,日頃からの組織内外での社会関係資本の蓄積が重要であり,それは同時に「ケアへの障壁」を軽減する対策にもなり得ると考えられた.