ウイルス
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特集2
抗HCV剤候補探索の現状とそれを用いたHCV複製機構の解析
渡士 幸一下遠野 邦忠
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2005 年 55 巻 1 号 p. 105-110

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抄録
 現在C型肝炎ウイルスに対する治療としては主にインターフェロン(IFN)の単独投与あるいはIFNとリバビリンの併用療法が適用されている.しかしこれらによる著効率は平均して3-6割というのが実状であり,これらに代わる抗HCV療法の開発が求められている.近年HCVが培養細胞内で自律的に複製増殖するHCVサブゲノムレプリコンシステムが確立され,培養細胞で抗HCV剤候補をスクリーニングすることが可能となった.我々はこの系を用いてさまざまな化合物のHCVゲノム複製への影響を調べることにより,免疫抑制剤シクロスポリン(CsA)が少なくとも培養細胞の系においてHCV複製を抑制することを見い出した.このCsAの抗HCV効果には免疫抑制作用は必要ないことがわかった.さらにCsAの抗HCV作用のメカニズムを解析することによって,CsAの細胞性標的因子の一つであるシクロフィリン(CyP)BがHCVのゲノム複製に重要な役割を果たすことが示唆された.このように抗HCV剤候補の探索は未知のHCV複製機構を解明する手がかりとなるかもしれない.
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© 2005 日本ウイルス学会
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