ウイルス
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HCVによる肝癌発症機序
土方 誠
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2006 年 56 巻 2 号 p. 231-239

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抄録
 C型肝炎ウイルス(HCV)は肝細胞癌(HCC)の主要な原因因子のひとつとして知られている.HCV感染による慢性肝炎がこのHCVが関連したHCCの発症に大きな要因である可能性が考えられているが,このHCCの発症機序はまだ完全に解明されてはいない.いくつかのHCV遺伝子産物には培養細胞を形質転換する活性があることが示されており,それらのタンパク質を外来性に培養細胞に発現させることにより,発癌に関連した細胞内のシグナル経路に変化が生じるという結果が得られている.また.これらのHCVタンパク質の中でコアタンパク質(コア)を発現するトランスジェニックマウスの中からは,比較的長い飼育の後,明確な肝炎症状なしに脂肪肝とHCCを発症するマウスが出てくることも報告されている.そこで細胞内の様々な事象の変化に対するコアの機能について広範囲に研究されている.ここではそうしたHCVに関連したHCCの発症機構に関する研究の進展状況について概説したい.
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© 2006 日本ウイルス学会
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