ウイルス
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特集1:ウイルス侵入と受容体
コロナウイルスの細胞侵入機構
田口 文広松山 州徳
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2009 年 59 巻 2 号 p. 215-222

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抄録
 エンベロープウイルスは,エンベロープと細胞膜の融合により細胞内に侵入する.コロナウイルス(CoV)ではスパイク(S)蛋白がその機能を担う.本稿では,2種類のCoV,マウスCoV(マウス肝炎ウイルス,MHV)と重症急性呼吸器症候群ウイルス(SARS-CoV)の細胞侵入機構について概説する.感染細胞に細胞融合を誘導するMHV株は受容体結合によりS蛋白が構造変化し,エンベロープと原形質膜の融合により細胞表面から侵入するが,感染細胞融合能のないSARS-CoV及びMHV-2株はエンドゾームに輸送され,その酸性環境下でプロテアーゼによりS蛋白融合能が活性化されエンドゾーム膜との融合により侵入することが明らかとなった.また,細胞表面の受容体に結合したこれらのウイルスは,幾つかのプロテアーゼにより活性化され,直接細胞表面から侵入することが示唆され,SARS-CoVではエンドゾーム経由侵入より効率が高く,感染動物の肺での高いウイルス増殖の原因となる可能性が示唆された.また,MHV-JHM株は受容体非発現細胞にも感染することが明らかになり,その機構はJHMVの高神経病原性と関連すると思われた.
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© 2009 日本ウイルス学会
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