ウイルス
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特集2:ワクチンの現状と将来
ワクチンの現状と展望
吉川 裕之
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2009 年 59 巻 2 号 p. 243-248

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抄録

 本邦では子宮頸癌は20代,30代の若年層で急増しており,罹患のピークは35-39歳にある.世界的には,子宮頚癌は罹患数・死亡数において女性の癌で第2位を占めている.子宮頸癌はHPVワクチンにより一次予防が可能である.HPV16とHPV18のウイルス様粒子をワクチンとして用いる.現在,HPV16/18の2価ワクチン(Cervarix)とHPV16/18にHPV6/11を加えた4価ワクチン(Gardasil)がある.これらのワクチンの接種で自然免疫の数十倍も高い中和抗体価が得られ,感染をブロックする.臨床試験でワクチンは子宮頸部の前がん病変であるCIN2/3やAISの発生をほぼ100%ブロックした.重篤な副作用はきわめて少なく,その効果は10年以上持続すると予想されている.HPVワクチンはすでに世界110か国以上で承認され,26か国では思春期女子に公費負担で接種している.多くの若い女性が命を失うこと,助かった場合でも生殖機能を失うことはすこぶる重大である.HPVワクチンにより近い将来において,子宮頸癌が征圧されることを期待したい.

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© 2009 日本ウイルス学会
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