2012 年 62 巻 2 号 p. 239-250
ブニヤウイルスは,ブニヤウイルス科オルソブニヤウイルス属,ハンタウイルス属,ナイロウイルス属,フレボウイルス属およびトスポウイルス属に分類されるウイルスの総称である.植物に病原性を有するトスポウイルス属以外は,脊椎動物に感染し,人や動物に重篤な疾患を引き起こす.いずれも,医学・獣医学・農学領域で重要な疾病であり,その多くが人獣共通感染症である(図1).ハンタウイルス属以外は,節足動物をベクターとするアルボウイルスであるが,自然界における感染環には属間で相違がある.近年,ハンタウイルスの自然宿主としてげっ歯目以外にトガリネズミ目の動物が重要な役割を担っていることが明らかになった.また,フレボウイルス属のウイルスを原因とし,血小板減少と発熱を特徴とする重篤な疾患が中国で新たに出現し1,2),その後,米国でも存在が確認され新興感染症として注目されている.