2015 年 65 巻 2 号 p. 219-228
イネいもち病菌に感染するマイコウイルスのうち,著者らはMoCV1というウイルスを見出した.MoCV1は5本の2本鎖RNAをゲノムとするウイルスで,クリソウイルス属に分類される.スピンカラム精製,RT-PCR,LAMP法などマイコウイルス由来の2本鎖RNAを迅速に検出する方法を駆使する事により,MoCV1関連ウイルスは日本国内にも多数存在することが判明した.本稿ではMoCV1の生化学的な特性やウイルスタンパク質成分が宿主細胞に及ぼす影響,MoCV1を利用した微生物防除資材としての展望や,出芽酵母異種発現系を利用した宿主細胞に対する生育阻害の作用について解説する.MoCV1に感染したイネいもち病菌は,生育不良となり,病原力の低下をもたらすが,それだけではなく病原性の変化を生じさせる要因になることも明らかになりつつあり,この事についても考察する.