ウイルス
Online ISSN : 1884-3433
Print ISSN : 0042-6857
ISSN-L : 0042-6857
トピックス
B型肝炎ワクチン
加藤 孝宣明里 宏文
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 72 巻 2 号 p. 149-158

詳細
抄録
 B型肝炎ウイルス(HBV)は感染力が極めて強く,一旦感染すると排除が難しい.HBV感染者の減少のためにはB型肝炎(HB)ワクチン接種によるHBV感染の予防が必要である.現在,国内では酵母由来のSmall-HBs抗原を含むHBワクチンが用いられており,HBVの感染阻止が可能な抗体が誘導できる安全なワクチンとして知られている.しかし一部の接種者では十分に抗体が誘導されない例があり,またワクチンエスケープ変異と呼ばれる特定のアミノ酸変異を持つ株に対しては,誘導された抗体の感染中和活性の低下が報告されている.我々は,酵母由来のLarge-HBs抗原を用いた新規HBワクチンを開発し検討を行った.この新規HBワクチンにより誘導された抗体は,従来のHBワクチンで誘導された抗体では感染阻止が難しいワクチンエスケープ変異株の感染阻止が可能であり,感染中和活性が低下するHBVの遺伝子型は従来のHBワクチンとは異なっていた.この新規HBワクチンを従来のHBワクチンと併用することで,多くのHBV株の感染が阻止できる抗体誘導が可能と考えられ,HBV感染の根絶のために新規HBワクチンの一日も早い実用化が望まれる.
著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top