抄録
1) 正常マウス脳にはニハトリ血球凝集素 (HAin) が存在し, 反応時間を長くすると10%乳剤3.000, 20分遠沈上清で100-200倍前後迄現われて来る. 従つて日本脳炎 (田中株, 中山株), セントルイス脳炎, Columbia S. K. 感染脳に於て同様の現象を見た.
2) ニハトリHAの反応至適pHは7.5前後で室温 (17℃) の方が37℃より反応を起し易い. 3.000, 上も10,000上清でもその現われ方, 最高価に殆ど変りな清でく4℃で1週前後存在する.
3) 乳剤作製直後は正常脳自身の中のinhibitorの作用で濃度の高い所はニハトリHA陰性でその最高価も割に低いが, 24時間内外立つと多くは陰性域少くなりその最高価迄出る様になる. ブイヨン乳剤乃至稀釈液にブイヨンを加えた場合はかゝる陰性域は初めから見られず最高価を示した.
4) 脱脂乳及び正常血清には相当高く抑制される. 又血清の抑制価は血清をクロロホルム抽出をしても殆ど変りない.
5) 日本脳炎ヴイルスの特異的ヒヨコHAinと同じく吸収は可能であるが解離は成功しなかつた.
6) 特異的ヒヨコHAinがトリプシン (0.05%), ホルマリン (0.5%), カルボール (0.2%) で破壊乃至不活化されるのにニハトリHAinはカルボール以外之等の作用を受けない.
7) 脂肪溶剤の中クロロホルムによりニハトリHAinは殆ど抽出され消失するがヒヨコHAinは猶相当に残存してる.
終りに川喜田教授の御校閲に謝意を表し同時に種々の御教示を受けた桑田助教授に感謝致します.