ウイルス
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経口生ポリオワクチン
Sabin 原ウイルスからの1型たね候補株の選択
土居 穣伊東 平八
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1979 年 29 巻 1 号 p. 31-44

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抄録

Sabin の1型原ウイルスから, 1代培養で, 複数の製造用たねレベルウイルスを試作し, それらの中から, それ自身のrctマーカー, および, 1代培養したワクチンレベルウイルスのrctマーカーの成績に基づいて, たねウイルス候補を選択した. つぎにこの候補ウイルスを用いて造ったワクチンレベルウイルスを, 検定に合格して実際に使用され, 有効性と安全性が証明されている過去の1型ワクチンと, 1) rctマーカー, 2) 継代によるrctマーカーの遺伝的安定性, 3) サル神経毒力, について比較した. 成績は今回試作し, 選択したたねウイルス候補が, 従来のものに比べてややすぐれた品質のワクチンウイルスを産生することを示した.
また, Sabin 原ウイルスのクローンに由来する試作ワクチンとも比較したが, 温度感受性はクローン由来ワクチンが高く, 確実な差を見せた. しかし, 脊髄内接種サル神経毒力試験において, 接種部位から遠隔の頸髄と脳幹部へのポリオ病変の広がりが強いという矛盾した成績であった. この点の解明は将来に残されている.
過去のワクチンが, 実際投与で有効性と安全性を証明されていることを考え, いっぽう, 温度感受性が著しく高いウイルスでは, 人体内での増殖も不良になって, 有効性を減ずる可能性も出てくることを考慮すると, 製造用たねウイルスの候補としては, 過去のワクチンに比べて同等, または少しよい温度感受性を示し, サル神経毒力の低いワクチンウイルスを産生するものを選ぶのが安全であると思われる.

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