ウイルス
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タバコ・モザイク・ウイルスの感染におよぼす高分子ポリカチオンとポリアニオンの影響
梶田 真司松井 千秋
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1981 年 31 巻 1 号 p. 33-39

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抄録
タバコ葉肉プロトプラストータバコ・モザイク・ウイルス (TMV) 系では, 高分子ポリカチオンによってTMVの負電荷を中和しないとウイルス粒子は原形質膜に結合せず, endocytosis も感染もおきない. ところが, インゲン葉組織-TMV系では, TMV液にポリリジン (高分子ポカチオン) を加えて接種すると感染率は著しく低下し, デキストラン硫酸カリウム (高分子ポリアニオン) を加えて接種すると感染率は上昇した. ポリリジン添加による感染率低下の主因は, 接種原TMVが凝集するためと考えられるので, これにデキストラン硫酸カリウムを加えてTMVの凝集を解消してみたが, 感染率の回復は約50%にすぎなかった, プロトプラスト系と葉組織系とでは, ウイルスの感染率におよぼす高分子ポリカチオンとポリアニオンの効果が異なっているから, 葉組織においてウイルス粒子は endocytic な過程を経て細胞内に取り込まれて感染が成立する可能性は低いと考えられる. また, 接種原液のpHが低下するほどウイルス粒子はより多く接種葉面に吸着することがすでに明らかとなっているが, 感染率は逆に低下するから, 接種葉面に吸着したウイルス粒子は感染に役立たないと考えられる.
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© 日本ウイルス学会
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