ウイルス
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ヒト・ロタウイルスの細胞培養への分離とその抗原性, 物理化学的性状
佐藤 邦彦
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1981 年 31 巻 2 号 p. 153-163

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抄録

非細菌性急性胃腸炎患児の下痢便14例中5例から, MA104細胞培養で細胞変性を伴って増殖し, 容易に継代できるヒト・ロタウイルスが分離された. 初代培養, またその継代にも, 接種材料はトリプシンで処理し, 少量のトリプシンを含む維持培養液で回転培養した. ウイルスが分離された2例を含め, 下痢症患児6例において分離ウイルスに対する中和抗体価の有意上昇が認められた. 感染細胞培養液にはロタウイルス特有のウイルス粒子が電子顕微鏡で観察された. 螢光抗体法により, 分離ウイルスがウシ・ロタウイルス Lincoln 株, ヒト・ロタウイルスWa株と共通抗原を有することが示された. モルモット免疫血清を用いた中和試験によりヒト・ロタウイルスには少なくとも4つの血清型の存在が示唆された. 分離ウイルスは 5-iodo-2′deoxyuridine により増殖が阻止されず, pH3で安定, エーテル, クロロホルム, デオキシコール酸ナトリウムに抵抗性, 比較的温度に対し安定で, 1-M MgCl2により安定化されない.

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