ウイルス
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Cre/loxPシステムを利用したHCVトランスジェニックマウスの確立
脇田 隆字
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1998 年 48 巻 1 号 p. 9-18

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抄録
遺伝子の誘導発現システムはその遺伝子の機能解析に有用である。Cre/loxPシステムはDNA組み換え酵素Creが触媒する遺伝子の再編成を利用した遺伝子発現誘導システムである。このCre/loxPシステムによりHCV遺伝子を誘導発現できるトランスジェニックマウスを開発した。Creを発現する組み換えアデノウイルスの経静脈投与によりトランスジェニックマウスの肝臓でトランスジーンの再編成が効率よくおこった。トランスジーンの再編成によりマウスの肝臓でのHCVコア, E1, E2の発現がおこり, ウエスタンブロットで検出した。肝臓でのHCV蛋白質の発現に引き続き, 肝障害がおこり, 血清トランスアミナーゼ値が上昇した。さらに, 14日目にはマウス血清中に抗コア抗体が検出され, HCV蛋白質に対する免疫反応が誘導されたと考えられた。このトランスジェニックマウスの肝障害は, CD4およびCD8陽性T細胞を除去することにより, 正常化したことからHCV蛋白質の直接の細胞障害作用は強くないと考えられた。Cre/loxPシステムによるHCVトランスジェニックマウスはHCVの病原性を研究するうえで有用な手段になると考えられた。
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