ウイルス
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HIVワクチン開発の現状と展望
黒田 マルセロJ守屋 智草
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2002 年 52 巻 2 号 p. 219-224

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抄録
過去20年間にわたるHIVの感染機構や感染をコントロールする免疫機能の膨大な研究データの蓄積にも関わらず, HIVの感染を効率良く阻止出来るワクチンの開発はまだ成功していない. 化学療法の進歩は大きく免疫不全の進行を阻止出来たが, この感染症は未だ持って致死的である. 特に途上国における感染者の数は増大の一途を辿っており, 安価, 簡便, かつ効果的な予防ワクチンの開発は危急の課題である. 様々な実験結果から, HIV増殖抑制には細胞性免疫が深く関与していることが示唆されている. 最近のマカクザルを用いた実験系では, ワクチンにより誘導されたCTLがAIDSウイルス感染後に急激に増化しウイルス抑制が認められたことから, 現在, HIV特異的細胞性免疫誘導型ワクチンが有望視されている. 本稿では, 今日までのHIVワクチン研究の現状と, 主にAIDS発症動物モデルであるSIV感染マカクザルを用いたワクチン効果を概説し, 今後の展望を考察したい.
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