抄録
さきにサルモネラ O〔I〕 抗原を支配する因子は特定のtemperate phage遺伝子機構の中にあることを述べたが, この一連のファージが菌のO〔I〕 抗原のみならず, 菌の糖分解transduetionに預ること, 更にやや異つたカテゴリーに属すると思われる2, 3のtransductionについての成績を述べ遺伝学的考察を加えた.
1. O〔I〕 抗原支配ファージを鼠チフス菌或はパラチフスB菌 (これらはヅルチット分解) で増強して, S. pullorum Kauffmann No. 75 (ヅルチット非分解) を溶原化すると10-8程度の割でヅルチット分解性のS. pullorumが得られた.
2. (1) のファージをS. pullorum K23 (P3と略す) と共に培養すると, P3はヅルチット非分解であるが, ヅルチット分解性のP3菌が得られる. この際P3菌は溶原菌であり (1) のファージでは溶菌されないが, (1) のファージを吸着する. こうした系でもtransductionは可能であり, この際prophageの種々のおきかわりを観察した.
3. 更にラムノーゼ分解の鼠チフス菌におけるtransductionの例をあげ, これらのtransductionについてその機転を考察した.