ウイルス
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植物ウイルスの虫媒伝染機作に関する研究 (第7報)
温州柑萎縮病媒介虫アオバハゴロモの保毒に伴う代謝成分の変化
吉井 啓木曽 皓菊本 敏雄
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1959 年 9 巻 5 号 p. 462-467

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抄録

(1) 媒介虫は保毒に伴つてもTCA-Cycle中のピルビン酸, クエン酸量には健虫に比べ差ががないが, コハク酸量は減少する. これは保毒中の呼吸衰退の一原因をなすと考える.
(2) 萎縮葉では還元糖, 水溶性糖は増加し, 不溶性糖と全糖は減少するが, 保毒虫ではいずれの糖も増加する. 即ちウイルスの感染保毒に伴い, 寄主・媒介虫に炭水化物の異常代謝が出現したと考えられる.
(3) 萎縮葉, 保毒虫共に健全個体に比べて可溶性窒素は増量し, 蛋白態窒素は減量する. しかして全窒素は両者とも減少する. これは感染保毒に伴い窒素代謝に変調が表われることを暗示している.
(4) 温州柑葉では遊離アミノ酸として, シスチン他14種, 媒介虫ではアスパラギン酸他12種がが認められるが, 感染保毒に伴う健病間の差異はない. 蛋白質構成アミノ酸は, 媒介虫では保毒によつても差異がないが, 寄主では感染によつてアラニン類似物質の新生を認める.
以上の結果より温州柑萎縮病ウイルスに感染保毒した寄主並に媒介虫は有機酸及び窒素, 炭水化物各代謝に変調を来たし, これらは呼吸, 燐酸, 核酸各代謝とあいまつて, それぞれの生体代謝に不均衡を生じ, 生体構成物質の動的平衡が破壊されて生活力に異常が表われると思われる.

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