動物の循環器
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原著
左室心内膜のび漫性ないし限局性肥厚を特徴とする猫の心疾患に関する病理学的検索
倉石 瞳町田 登
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2004 年 37 巻 2 号 p. 57-67

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抄録

拘束型心筋症の病態を呈して死亡した猫13例の心臓を病理学的に検索したところ,左室心内膜に線維増生病変が認められた。本病変はその肉眼的形態から,左室心内膜が全域にわたってび漫性に肥厚する心内膜び漫性肥厚型(7例),左室乳頭筋上部に限局性弁状隆起が見られる心内膜限局性隆起型(4例),仮腱索が網目状~蜘蛛の巣状に張りめぐらされた異常仮腱索形成型(2例)の3タイプに分類された。心内膜び漫性肥厚型7例のうち3例と心内膜限局性隆起型4例のうち1例では,同時に比較的細い仮腱索の形成も認められ,心内膜び漫性肥厚型のうち左室流出路付近に病変が主座していた3例では,心内膜限局性隆起型との類似性が認められた。組織学的に心内膜び漫性肥厚型は炎症/肉芽組織層と線維性結合組織層の2層からなる境界不明瞭な層構造をなしており,心内膜限局性隆起型の弁状構造物もおおむね同じ構造を有していた。異常仮腱索形成型ではその起始部は前2者と同じ構造をとっていたことから,これら3タイプの心内膜病変は共通した組織所見を有していることが明らかになり,同一の病理発生メカニズムに起因するものと考えられた。以上より,猫の左室心内膜肥厚は肉眼的に様々な形態をとり,それぞれ臨床的には異なる疾患としてとらえられているものの,これらの病変は拘束型心筋症という1つの範疇に分類されるべき疾患群であると見なされた。

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© 2004 日本獣医循環器学会
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