抄録
マイクロミニピッグを用いて心臓電気薬理学的検討を行うために,気管内挿管を行った。ヒト用アンブ蘇生バッグを用いた用手的換気により胸郭の動きと両側肺野の呼吸音を確認したのち,人工呼吸器回路に挿管チューブを接続した。その直後より経皮的酸素飽和度の低下を認めたので,挿管ミスを疑い,抜管・再挿管を計3回繰り返した。その間にマイクロミニピッグはチアノーゼおよび心窩部と左下腹部の膨満を呈した後,心停止した。直ちに胸骨圧迫による心臓マッサージ,アドレナリンおよびアトロピンの静脈内投与による救命処置を施したが,マイクロミニピッグは心室細動を起こし,死亡した。死因究明のために開胸したところ,胸腔内から大量の気体の脱出を認めた。肺は虚脱し収縮していた。肺を摘出したところ,両肺底部が気腫状に変形し,ブラおよびブレブの形成を認めた。また,左下腹部に皮下気腫を認めた。以上より,緊張性気胸に起因する循環不全で死亡したと判断した。気胸の原因はヒト用アンブ蘇生バッグによる用手的換気量がマイクロミニピッグの肺容量には過大であったためと考えた。