抄録
4カ月齢の雑種犬が発咳を主訴に来院した。身体検査にて呼吸器疾患が疑われたため,胸部X線検査を実施したところ,心拡大を認めた。発咳の原因としてイヌ伝染性気管・気管支炎などの感染症を疑い,抗生剤を投与したところ,発咳は消失した。一方,その後に実施した心エコー検査にて,右肺動脈内および大動脈周囲に連続する異常血流所見が認められた。さらに,心臓カテーテルによる冠動脈造影検査,造影CT検査において,冠動脈の一部が肺動脈へ短絡している所見が得られ,冠動脈肺動脈短絡を示す冠動脈瘻,すなわち冠動脈肺動脈瘻と診断した。なお,僧帽弁閉鎖不全症を合併していたため,血液バイオマーカーなどの定期検診も行いつつ,経過を観察中である。