抄録
無麻酔下におけるイヌの血圧測定にあたり,ヒト用に開発された非観血型測定器を用いて,その有用性を検討した。実験にはビーグル犬10頭(雄18カ月齢,体重8.6~13.1kg)を用いた。非観血的血圧測定にあたってはオシロメトリック法による全自動血圧計(DINAMAP 1846 SXP, CRITIKON社)を使用した。また,間接法と直接法との相関性を調べる実験では,予めポエチレンチューブを慢性的に大腿動脈から埋めこんでおいた腎性高血圧犬を測定の対象とした。得られた結果は以下に示すとおりであった。
1)4種類の幅の異なるカフを使用して得られた血圧値の成績から,測定に最も適したカフとして幅4.6×13.1cmのものが選択された。
2)直接法との間では,前肢における測定値が最も高い相関性を示した。
3)繰り返し測定による血圧値の再現性では,1回目,2回目より,3回目が低い値を示す傾向が認められた。
4)測定時の体位については右側横臥位が懸垂位および直立位に比べて低値を示す傾向にあり,これにはカフと心臓との位置関係が大きく影響していた。
5)隔離された動物飼育室で飼われているイヌでは明らかな血圧の日内変動が認められなかった。