抄録
本研究では,窪地の埋め戻し場所に出現したアマモの遺伝的多様性と種子供給源の解明を目的に,岩国市地先及び広島湾周辺海域においてアマモの生育状況調査とマイクロサテライトマーカーによる遺伝子解析を行った。その結果,主な種子生産区域は能美島,大畠-神代,宮島地区と考えられた。1遺伝子座当たりの平均アレル数と平均へテロ接合率を比較すると,埋め戻し場所のアマモは天然アマモ場と比較して大きな差はなかった。ペアワイズFstは0.000~0.037の範囲にあり,アマモ場相互の盛んな遺伝的交流が考えられた。アサインメントテストでは,埋め戻し場所のアマモは近隣のアマモ集団だけでなく,15 km以上離れたアマモ集団との間でも最大尤度を示した。以上の結果から,埋め戻し場所のアマモは天然アマモ場と同様な遺伝的多様性をもち,種子供給源として近隣のアマモ場だけでなく,広島湾内にある遠方のアマモ場も寄与することが考えられた。