抄録
水銀沈着量の地域的な差異を明らかにするため,琵琶湖流域内の環境条件が異なる4地点において,大気降下物中総水銀濃度の調査を行った。観測期間中の平均総水銀濃度は,5.98±1.66 ng•L-1~8.76±3.29 ng•L-1の範囲であり,各地点の年間沈着量(2012年)をみると,最大は北部における17.5 μg•m-2,最小は東部の10.4 μg•m-2であった。琵琶湖集水域は南北に広く,環境条件や土地利用も多様であることから,地点的な汚染の程度が異なると考えられる。モニタリング結果から,大気降下物による琵琶湖湖面への直接水銀負荷量(2012年)を算出すると9.04±2.00 kg•year-1となった。大気降下物による琵琶湖への水銀負荷を詳細に評価するためには,沈着メカニズムの解明や多地点での長期的なモニタリングが重要であることが明らかになった。