抄録
本研究はメタン生成古細菌(methane-producing archaea; MPA)と硫酸塩還元細菌(sulfate-reducing bacteria; SRB)の基質競合に及ぼす酸素,pHショックおよびH2Sの影響を究明することを目的として,UASBによる高濃度硫酸塩含有廃水の連続処理を360日間行った。リアクターの上部で微曝気をすることにより硫酸塩除去率が45.0%から68.6%に若干増加したが,メタン生成がリアクター内の主反応であった。また,pHショックと容積負荷の影響により硫酸塩還元が更に進行した。水中未解離性硫化水素濃度が200 mg·L-1以上になることで,MPAに阻害影響を及ぼすようになり,リアクター内のメタン生成反応は完全に抑制された。UASBリアクターの処理性能とグラニュールの16S rRNAクローンライブラリーによる解析の結果から,完全な硫酸塩還元段階では不完全酸化型SRBにより,エタノールを利用する硫酸塩還元反応が活発に進行していたことが明らかとなった。